木製品の塗装、逆引き辞典

木製品の塗装は、木目を美しく際立たせる、耐久性を高める、手触りを変える、紫外線から守る、防虫効果を与えるなど、様々な役割を担っています。
ネット上にも、塗装について記述は多く見られますが、そのほとんどは、塗料や塗装方法の種類や違いについて、DIYも含めた作る側の為の情報ですよね。
そこで今回は、お客様(使う人)の立場にたって、木製品を選ぶ時のミスマッチを避けるための情報、つまり、
「こんな風に使いたい!」という気持ちから、ぴったりの製品が選べるように、「塗装(仕上げ)逆引き辞典」を作りました。
お客様の木製品選びのご参考にしていただけたら嬉しいです。


*先ずは、使われる塗料の違いから1~6

1. 木の質感をそのまま感じたい!オイル仕上げ 

オイル仕上げは、最も原始的な塗装方でアマニ油などの植物油を染み込ませる方法です。現代では、塗料メーカーによって、若干の合成樹脂も含む場合もありますが、いわゆる「自然塗料」として認知されています。木そのものの色や質感を活かした、自然な仕上がりでありながら、ある程度の保護性もあります。

  • メリット:温かい手触り。浸透性で塗りムラができにくい(塗りやすい・メンテナンスが容易)経年変化(自然な劣化・味わい)が楽しめます。
  • デメリット:耐久性、木材の保護と言う観点では合成樹脂塗料に劣ります。
  • 使用例: サラダボウル、カッティングボード、スプーンなど

2.濡れ色の艶と滑らかさ、防汚効果を期待!→ ワックス仕上げ 

蜜蜂の巣から採取した蜜蝋ワックス、カルナウバヤシの葉から採るカルナウバワックスなど。

木材の表面に薄いワックス層を作り、保護と美観を向上させます。自然な艶と滑らかな手触りがあります。

  • メリット:自然な仕上がり感。滑らかで優しい触り心地。若干の耐水性。メンテナンスが容易。
  • デメリット:耐久性は低い。木材の保護と言う観点ではオイル系、合成樹脂塗料に劣ります。
  • 使用例: 家具、床、靴べら、アンティーク仕上げの雑貨など

3. 傷や汚れからしっかり守りたい!ウレタン仕上げ 

合成樹脂の一つ、ウレタン樹脂の硬化によって形成される塗膜で、耐久性、耐水性、対薬品性など、機能的な側面で強化された塗料です。また、単なる塗膜にとどまらず、木質層の中まで浸透して硬化させれば、木そのもの質も変わります。強度の求められる、家具や木器に適しています。

  • メリット: 耐水性、耐熱性、耐摩耗性が高い、お手入れ簡単
  • デメリット:木そのものの素材感が失われる。
  • 使用例: ダイニングテーブル、椅子、床材など

4.美術的価値を求めたい漆塗り

古代から用いられた天然素材でありながら、塗膜の強度はウレタン塗装にも匹敵します。東アジア原産の漆はヨーロッパには存在せず、近代以降の塗料の歴史は、いかに漆の様な強靭な塗料を開発するか、、だったと言っても過言ではないでしょう。そして、そうしたより扱い易い塗料が普及するに従って、手間のかかる漆塗りは、さらなる高度な技法とともに付加価値つけて行ったのでな無いでしょうか。

  • メリット: 耐水性、耐熱性、耐摩耗性が高い、技術的価値が高い
  • デメリット:高価
  • 使用例: 食器、重箱、アクセサリー、楽器


*ここからは塗装方法の違いから 5~6

5. 木目の美しさを楽しみたい→クリアー仕上げ・木地着色ワイピング仕上げ

木には木目と言われる独特の模様があり、木目には「1/Fゆらぎ」と言われる、心地よさや癒しの効果があります。なので、木目を消してしまうのではなく、透明(クリアー)の塗膜とする方法です。

→木地着色、ワイピング仕上げ
木目の美しさをより強調する為に、オイルステインや顔料を含んだ着色剤を木材の導管にしみ込ませた後、表面の余分なステインを拭き取る技法です。ただし、この技法は導管にメリハリのある広葉樹環孔材(例:ナラ、タモ)に適しており散孔材(例:カエデ)や針葉樹(例:ヒノキ、パイン)には向きません。

使われる塗料:自然塗料から合成樹脂までほぼ全般
使用例:家具全般、木製品全般

6.木目を感じつつ、好きな色を楽しみたい→上塗り着色仕上げ( 半透明・不透明)

半透明着色
上塗り塗料に染料系の着色剤を含む方法です。前述4とは逆で散孔材(例:カエデ)や針葉樹(例:ヒノキ、パイン)に適しています。塗料としては自然塗料、ワックス、水性アクリル塗料、1液ウレタン塗料等、ほぼ全ての塗料が使われます。前述4の様な木目を感じつつ、後述不透明着色のように、カラーコーディネーションが楽しめる、イイトコドリの方法です。
例:家具全般、雑貨
使われる塗料:自然塗料から合成樹脂までほぼ全般

不透明着色
漆塗りのお碗やロココ調家具の様な、いわゆる「塗り潰し」。最近ではDIYの普及と共に扱い易い水性塗料が開発された事もあって、素材(木)に関係なく色を楽しむ傾向にあります。カラーコーディネートの視点でも重宝します。塗膜としては決して強くはありませんが、逆に傷などの経年変化がいわゆるシャビー感として味わいになります。

例:漆器、アンティーク家具、幼児家具、インテリア雑貨
使われる塗料:アクリル絵具の様なエマルジョン系の塗料

↑はテーブルの天板と椅子の座面、背もたれが半透明
フレームの部分が不透明(塗り潰し)

まとめ

木製品の塗装は、「塗料」と「塗り方」の掛け算で様々な仕上がりとなります。それぞれに長所・短所がありますから、作り手の趣旨と使い手の希望が合致するのがのぞましいですね。それぞれの仕上げ方法の特徴を理解し、お気に入りの一品を見つけて、木の温もりを感じてください。

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