木製食器、レジン製食器の製造者が留意すべき「改正食品衛生法」のまとめ
この記事は、改正された食品衛生法において、木製食器やプラスチック製食器(レジンを含む)の製造者が留意すべき点をまとめた内容になっております。
ほとんどが厚生労働省ホームページからの転載となっておりますが、一部において個人的解釈を含んでおりますので、以下の様に文章を色分けしております。
条文→赤
厚生労働省の解説文の転載→青
私の解釈(まとめ)→黒
食品衛生法の容器・包装の定義
第4条第4項
器具とは、飲食器、割ぽう具その他食品又は添加物の採取、製造、加工、 調理、貯蔵、運搬、陳列、授受又は摂取の用に供され、かつ、食品又は添 加物に直接接触する機械、器具その他の物をいう。
→食器も含まれる
↑出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000537820.pdf)
ポジティブ化(2018年6月13日公布)
我が国の食をとりまく環境変化や国際化等に対応し、食品の安全を確保するため、広域的な食中毒事案への対 策強化、事業者による衛生管理の向上、食品による健康被害情報等の把握や対応を的確に行うとともに、国際整合的な食品用器具等の衛生規制の整備、実態等に応じた営業許可・届出制度や食品リコール情報の報告制度の 創設等の措置を講ずる。
現行
原則使用を認めた上で、使用を制限する物 質を定める。海外で使用が禁止されている物質であっても、規格基準を定めない限り、直ちに規制はできない。
改正後
原則使用を禁止した上で使用を認める物 質を定め、安全が担保されたもののみ使用でき る。
第18条 第3項(新設)
器具又は容器包装には、成分の食品への溶出又は浸出 による公衆衛生に与える影響を考慮して政令で定める材質の 原材料であって、これに含まれる物質(その物質が化学的に 変化して生成した物質を除く。)について、当該原材料を使用 して製造される器具若しくは容器包装に含有されることが許容 される量又は当該原材料を使用して製造される器具若しくは 容器包装から溶出し、若しくは浸出して食品に混和することが 許容される量が第一項の規格に定められていないものは、使用してはならない。ただし、当該物質が人の健康を損なうおそ れのない量として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意 見を聴いて定める量を超えて溶出し、又は浸出して食品に混 和するおそれがないように器具又は容器包装が加工されてい る場合(当該物質が器具又は容器包装の食品に接触する部 分に使用される場合を除く。)については、この限りでない。
【器具・容器包装部会(令和元年7月8日)資料2より抜粋】
○ 改正食品衛生法第18条第3項ただし書の規定により人の健康を損なうおそれのない 量として厚生労働大臣が定める量は、0.01mg/kg食品とする。
○ ここで、食品への移行量は、食品擬似溶媒中濃度に、係数(器具・容器包装に接触 する食品の重量/食品擬似溶媒量)を乗じて算出されるが、この係数は1に概算できる と考えられる。このため、食品への移行量0.01mg/kgは、食品擬似溶媒中濃度として 0.01mg/Lと考えて差し支えないと考えられる。
ここでのまとめ
木製食器の場合、木自体は天然素材なので改正法の対象外ではあるが、接着剤や塗料に合成樹脂を用いるのであればポジティブリストの対象となりえる。
ただし、食品に混和するおそれがないように器具又は容器包装が加工されてい る場合については従来通りの「人の健康を損なうおそれのない量 」であれば使用可能。尚、その量は食品擬似溶媒中濃度として0.01mg/Lと考えて差し支えないと考えられる。
公衆衛生上必要な処置の義務
第52条(新設)
厚生労働大臣は、器具又は容器包装を製造する営業の施設の衛生的な管理その他公衆衛生上必要な措置(以下この条において「公衆衛生上必要な措置」という。)について、厚生労働省令で、次に掲げる事項に関する基準を定めるものとする。
一 施設の内外の清潔保持その他一般的な衛生管理に関 すること。
二 食品衛生上の危害の発生を防止するために必要な適正 に製造を管理するための取組に関すること。
2 器具又は容器包装を製造する営業者は、前項の規定により定められた基準(第18条第3項に規定する政令で定める材質以外の材質の原材料のみが使用された器具又は容器包装 を製造する営業者にあっては、前項第1号に掲げる事項に限 る。)に従い、公衆衛生上必要な措置を講じなければならない。
3 都道府県知事等は、公衆衛生上必要な措置について、第1項の規定により定められた基準に反しない限り、条例で必要な規定を定めることができる。
ここでのまとめ
器具・容器包装を製造・販売する事業者は施設において公衆衛生上必要な措置を講じなければならない。
情報伝達義務
第53条(新設) 第十八条第三項に規定する政令で定める材質の原材料が使用された器具又は容器包装を販売し、又は販売の用に供するために製造し、若しくは輸入する者は、厚生労働省令で定めるところにより、その取り扱う器具又は容器包装の販売の相手方に対し、当該取り扱う器具又は容器包装が次の各号のいずれかに該当する旨を説明しなければならない。
一第十八条第三項に規定する政令で定める材質の原材料について、同条第一項の規定により定められた規格に適合しているもののみを使用した器具又は容器包装であること。
二第十八条第三項ただし書に規定する加工がされている器具又は容器包装であること。
②器具又は容器包装の原材料であつて、第十八条第三項に規定する政令で定める材質のものを販売し、又は販売の用に供するために製造し、若しくは輸入する者は、当該原材料を使用して器具又は容器包装を製造する者から、当該原材料が同条第一項の規定により定められた規格に適合しているものである旨の確認を求められた場合には、厚生労働省令で定めるところにより、必要な説明をするよう努めなければならない。
ここでのまとめ
器具・容器包装を製造する事業者は、販売者に対し、原材料や加工方法などの情報伝達義務がある。
また、原材料を製造・販売する事業者は器具・容器包装を製造する事業者に対し、情報伝達義務がある。
出典:厚生労働省ホームページ (https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000635338.pdf)
届出の義務
第57条 (新設)
営業(第54条に規定する営業、公衆衛生に与える影響が少ない営業で政令で定めるもの及び食鳥処理の事業を除く。)を 営もうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、その営業所の名称及び所在地その他厚生労働省令で 定める事項を都道府県知事に届け出なければならない。
ここでのまとめ
器具・容器包装を製造・販売する事業者は届出の義務がある
ただし、法律の施行(2020年)以前から存在する物については適応しない
ポジティブリスト経過移行期間
食品、添加物等の規格基準(厚生省告示第370号)改正案(骨子)
・法第18条第3項の規定により、合成樹脂の原材料は別表第1に掲げるものであること。
・着色目的の物質は、定められた着色料若しくは溶出又は浸出して食品に混和するおそれのない
ように加工されている着色料であること。
・同表第1表(2)の表中の使用可能ポリマー欄に掲げる基ポリマーはプレポリマーを適切な基材上で高分子化又は架橋されなければならない。
・基ポリマーの構成成分に対して98重量%超が別表第1第1表(1)又は(2)の表の使用可能ポリマー欄に掲げる物質で構成され、残りの構成成分は同表第1表(3)の表に掲げるモノマーの共 重合体で構成されること。
※別表第1のリンク
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000581167.pdf
ポジティブリストで掲載された物質、及び規制値などは、専門性が高く理解が及びませんでした。
まとめ
木製食器、レジン製食器の製造者が留意すべきは、接着剤及び塗料などの原材料の供給者が、改正食品衛生法によって情報伝達義務を負うので、それらの製造元からの情報に従い、適切な原材料を選ぶと同時に、消費者及び都道府県知事に対し、情報を開示できなければなりません。
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